不整脈の薬で低血糖が起きる? 薬剤師であれば知っていて当然 国家試験でも出題歴あり

くすり

以前に【SGLT2阻害剤は心不全にも使われます】でも紹介しましたが、糖尿病の治療薬でなくても低血糖が起きることがあります。今回は、不整脈の薬による低血糖の副作用について紹介します。

本当に不整脈の薬で低血糖が起きるのか

不整脈とは、心臓の脈の乱れがある疾患ですね。早すぎるのを頻脈、遅すぎるのを徐脈といいます。それ以外に、リズムが乱れているのを期外収縮といいます。抗不整脈薬は頻脈や期外収縮の治療に用いられます。

不整脈の薬で低血糖が起きるとは通常は思いませんよね。循環器内科の医師でもあまり知らないかもしれませんが、薬剤師であれば知っているべき副作用で、過去の国家試験でも出題されています。

不整脈の薬の中でIa群という分類の薬は、低血糖を起こすことがあるため注意が必要です。
特に、腎臓の機能が低下していたり高齢者の場合には注意が必要です。

Ia群の抗不整脈薬

  • シベンゾリン
  • ジソピラミド
  • ピルメノール

不整脈の薬の中で、Ia群以外の薬は低血糖を起こすことはありません

過去の薬剤師国家試験の問題

第101回薬剤師国家試験の問200に、Ia群の抗不整脈薬であるシベンゾリンによる低血糖の問題が出題されています。

【第101回 薬剤師国家試験 問200】

60歳、女性、身長150cm、体重45kg。めまい、ふらつき、冷汗、軽度の意識障害を主訴として受診しています。

検査値は血清クレアチニンが1.5 mg/dL、BUNが29 mg/dL、PT-INR2.0、空腹時血糖値が40 mg/dLです。

持参薬は
シベンゾリンコハク酸塩100mg 1日3錠
ベラパミル塩酸塩錠40mg 1日3錠
ワルファリンK錠1mg 1日2錠
ロキソプロフェンNa錠60mg 1日3錠
テプレノンカプセル50mg 1日3カプセル

この女性の主訴の原因として、服用中の薬物の副作用を疑った。最も可能性の高い薬物はどれか。1つ選べ。

回答は

結論から言うと、シベンゾリンによる副作用で低血糖が生じていると考えるのが正しいですね。

この問題のポイントとしては、まずは検査値から低血糖がわかること。検査値と合わせてめまい、ふらつき、冷汗、軽度の意識障害の主訴からも低血糖が起きていることが分かります。 2つ目は、Ia群の抗不整脈薬であるシベンゾリンは低血糖の副作用があることを知っていること、ですね。

Cockcroft-Gault式でクレアチニンクリアランスを計算すると、28.3mL/minと腎機能が低下していることがわかります。

シベンゾリンは腎排泄の薬ですが、問題の症例では常用量で服用していますので、副作用が発現しやすい状態といえます。

沢井製薬 HPより引用

シベンゾリンのノモグラムを用いると、この患者さんでは1日100mgが推奨量となるため、3倍量が処方されていることになります。

もっと深く考えると、腎機能が低下しているためシベンゾリンによる副作用が表れやすいこと、ロキソプロフェンを定期的に内服しており、その影響で腎機能が低下しているかもしれない、などが考えられます。

ワルファリンを服用していますが、PT-INRの値は2.0と良好にコントロールされていますので問題ありませんね。

まとめ

  • Ia群の抗不整脈薬(シベンゾリン、ジソピラミド、ピルメノール)は低血糖の副作用がある。
  • Ia群の抗不整脈薬は腎臓の機能が低下している場合、減量しなければならない。
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