ヒヤリハット事例|リベルサスの特徴と注意点

医療

リベルサス錠は日本で最初に発売された内服薬のGLP-1受容体作動薬です。

GLP-1受容体作動薬といえば、ビクトーザやバイエッタ、トルリシティ、オゼンピックなどの注射薬が発売されています。

GLP-1はペプチドホルモンですので経口摂取しても効果は期待できないと思ってしまいますが、リベルサスはオゼンピックと同じ成分であるセマグルチドの内服薬です。

注射薬よりも内服薬の方が患者さんのアドヒアランス向上が期待できるため、リベルサスは非常に使用しやすい薬と考えます。

しかし、リベルサスは起床時に服用する、少量の水で服用する、服用後30分間は飲食や他の薬剤を服用しない、PTPシートをハサミで切らない、といった注意点が多くあります。

実際に、日本医療機能評価機構が情報提供しているヒヤリハット事例には、リベルサスとビスホスホネートが処方されている事例が掲載されています。

この記事では、リベルサスの作用機序や副作用など基本的情報や調剤時の注意点、医療機能評価機構のリベルサスに関するヒヤリハット事例などをまとめています。

作用機序

セマグルチドは、ノボ ノルディスク社が開発した生体内のGLP-1と94%の構造的相同性を有するGLP-1受容体作動薬です。

注射薬としてはオゼンピックが、内服薬はリベルサスが発売されています。

セマグルチドは、膵β細胞上のGLP-1受容体に結合し、ATPからcAMPの産生を促進させることにより、グルコース濃度依存的にインスリンを分泌させます。

また、血糖値が高い場合にはグルカゴン分泌を抑制します。

リベルサス錠 インタビューフォームより引用

セマグルチドはペプチドのため、消化管からの吸収が悪いことや、消化酵素で分解されてしまうことを考えると経口摂取では効果が期待できないと考えてしまします。

それを経口摂取ができるようにするために、リベルサスにはSNACという吸収促進剤が配合されています。

SNACの局所でのpH緩衝作用により、セマグルチドの急速な酵素的分解を防ぎ、経口投与が可能となった薬剤です。

半減期

インタビューフォームによると、セマグルチド40mgを単回投与した際の半減期は116時間となっています。(※通常用量は3~14mgです)

高分子親水性リンカーや脂肪酸を結合することで、アルブミン結合親和性を増強し、血漿中でのセマグルチドの分解を遅延させ、結果的に腎クリアランスが低下します。

これらのことで、経口摂取した時のセマグルチドの半減期は約1週間まで延長されます。

副作用

リベルサスの主な副作用に胃腸障害、低血糖があります。

胃腸障害や体重減少はほぼ必発のため、やせるための薬として不適切な使用がされ注意喚起がされていました。

胃腸障害、吐き気、嘔吐

リベルサスに限った副作用ではないですが、GLP-1の主な副作用として胃腸障害、吐き気、嘔吐があります。

リベルサスの添付文書には5%の頻度で悪心が記載されています。

この胃腸障害を最小限に抑えるために、初回用量は3mgと少量から開始し、漸増していく必要があります。

下痢

リベルサスのRMPには胃腸障害の中に下痢も含まれて記載されています。

添付文書には悪心と同じく下痢は5%の頻度で記載されています。

便秘

便秘の副作用は添付文書に1~5%の頻度で記載されています。

便秘もRMPの中では胃腸障害の中に含まれています。

低血糖

作用機序のところでも書きましたが、GLP-1受容体作動薬は、グルコース濃度依存的にインスリンを分泌させるため、理論的には低血糖は生じないと考えられます。

しかし、SU剤やインスリンと併用することで低血糖のリスクが高まるため注意が必要です。

奇数での処方日数は禁止

リベルサスは吸湿性が高いため、PTPから出して一包化することはできません。

それだけではなく、PTPシートをミシン目以外の所で切ることも不可となっています。

発売当初は1シート7錠と1シート10錠の2種類が発売されていましたが、7錠のシートは発売中止となりました。

そのため、リベルサスの処方日数は偶数で処方されなければなりません。

服用方法の注意点

作用機序でも説明しましたが、セマグルチドは本来はペプチドホルモンのため、経口摂取しても消化管から吸収されず、消化酵素で分解されてしまいます。

そこで、吸収を高めるためにSNACが配合されています。

胃に内容物があるとリベルサスの吸収が低下してしまうため空腹の状態で服用しなければなりません。

かつ、水分が多すぎても吸収が変化してしまうため、120mL以下の水で服用する必要があります。

そして、服用後30分間は飲食や他の薬剤の服用を避けなければなりません。

他の薬はもちろんですが、消化管内でリベルサスが2錠存在することでも吸収が変化してしまうため、14mgが必要な場合でも、7mg錠を2錠服用することはできません。

以上の条件を考えると、リベルサスを服用する時間は起床時に限られてきます。

医療機能評価機構 薬局ヒヤリハット報告事例から

医療機能評価機構のヒヤリハット事例には、リベルサス錠とビスホスホネートが併用されていた事例が報告されています。

服用方法の注意点で説明しましたが、リベルサスは起床時に服用しなければなりません。

起床時に服用する薬で思いつくのはビスホスホネートがあります。

ビスホスホネートは1週間に1回服用する製剤が増えてきましたが、リベルサスと同じで起床時に服用する薬です。

また、ビスホスホネートは食道に停滞するのを防ぐために180mL以上の水で服用しなければなりません。

ビスホスホネートとリベルサスを起床時に一緒に服用してしまうと、飲水量が問題になることと胃内に複数の錠剤が存在することが問題になり、リベルサスの吸収が低下してしまう恐れがあります。

対応方法としては、ビスホスホネートが1週間に1回服用する製剤であれば、ビスホスホネートを服用する曜日のみ、リベルサスを中止するといった方法が考えられます。

理由としては、リベルサスの半減期が長いため1日休薬しても、大きな影響はないためです。

具体的な事例内容は、下記を参考にしてください。↓

【日本医療機能評価機構 リベルサス ヒヤリハット事例】

リベルサス錠 インタビューフォーム

この記事で説明したリベルサスの基本情報はインタビューフォームに記載されています。

【リベルサス錠 インタビューフォーム】

まとめ

この記事では、GLP-1受容体作動薬の内服薬であるリベルサスの使用時の注意点やヒヤリハット事例について説明ました。

過去のヒヤリハット事例は非常に参考になるものが多くありますので、他にも紹介していきたいと思います。

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