糖尿病は名前の通り、尿に糖が出てくる病気ですが、その治療薬の一つに、尿に糖を出す薬があります。「糖尿病で尿に糖がもっと増えていいの?」と思いませんか?
尿に糖を出す薬はSGLT2阻害剤といわれる薬です。通常、尿を作る腎臓では、尿の中から糖を体の中に戻す働きがあるため、尿の中には糖はでてきません。ですが、糖尿病のようにインスリンの働きが悪くなり体の中に糖がたまりすぎると、腎臓は糖を体の外に出そうとして、尿の中に糖がでてきます。
SGLT2阻害剤は、腎臓で尿を体の中に戻す部分をブロックし血糖値を下げますので、尿糖を調べると陽性になります。通常、人間の体は尿から糖が出ないように働いているところ、SGLT2阻害剤は、それを逆に働かせているため、発売当初は問題点がたくさん出てくると私は思っていました。
実際、脱水や脳梗塞、尿路感染症、性器感染症、重症低血糖、ケトアシドーシスなどの副作用が問題となり、日本糖尿病学会からは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf が発表されています。
使用量が少なくなっていくのか、と思っていましたが、実際にはその後も使用量はどんどん増えています。しかも、糖尿病だけでなく心不全や腎不全など糖尿病でない他の病気にも使用されるようになってきました。
現在、日本では7種類のSGLT2阻害剤が使用されていますが、一番最初に使用されたのはスーグラ(イプラグリフロジン)です。その名前の由来は「作用機序に関連する、SGLT2(sodium glucose co-transporter 2)のローマ字部分 S・G・L・T をとって、スーグラ(Suglat)と命名した」(スーグラ錠インタビューフォームより引用)となっています。
SGLT2阻害剤は、糖尿病、心不全、腎不全の患者さんに対して、いい効果が表れていると思いますが、正しく使わないと危険な副作用を生じてしまいます。脱水や脳梗塞、尿路感染症、性器感染症、ケトアシドーシスなど危険な副作用について、医師や薬剤師からきちんと説明を受けたうえで服用しましょう。