ニトログリセリンは血管拡張作用が強いこと、作用発現が早いこと、持続時間が短いことなどから狭心症の治療薬や、心不全の治療薬として用いられます。
ニトログリセリンの製剤は、錠剤、外用剤、注射剤が発売されていますが、それぞれ使用する際に注意する点があります。
錠剤のニトログリセリン
ニトログリセリン、よく「ニトロ」と言われています。
狭心症で胸がキューっと痛くなった時に使用する薬です。
通常の薬のように、普通にゴクンと飲んでしまうと全く効果がありません。
舌下錠といって、口の中の粘膜から体に吸収されて効果を発揮する薬です。
腸から吸収された薬は、必ず肝臓を通って全身の血液に流れていきます。
そのため、肝臓で代謝されやすい薬は、服用して腸から吸収されても、肝臓で代謝を受け全身に作用する有効成分は少なくなってしまいます。
これを、「初回通過効果」といいます。
ニトログリセリンは初回通過効果が高く、腸で吸収されても肝臓でほぼ100%代謝されてしまいます。
口腔粘膜から吸収された場合は初回通過効果を受けませんので、舌下錠として使用されます。
貼り薬であれば初回通過効果を避けることができますので、ニトログリセリンは貼付薬としても発売されています。
舌下で使用した場合、数分で効果が発現します。
そして、心臓に栄養や酸素を運ぶ血管(冠動脈)を拡げて狭心症の症状を改善させます。
狭心症と心筋梗塞の違いとしては、狭心症は少しは血液が流れている状態で、心筋梗塞は完全に血管が詰まっている状態と考えればよいと思います。
心筋梗塞の場合は冠動脈が完全に詰まってしまっているので、ニトログリセリンを使用しても改善しませんので、2回使っても胸の痛みが治まらない場合は、すぐに病院へ行きましょう。
注射のニトログリセリン
ニトログリセリンは点滴静注でも使用されます。
舌下錠や貼付薬は狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患にのみ使用されますが、点滴静注の場合は、それだけでなく心不全や手術時の高血圧に対しても使用されます。
商品名ではミオコールやミリスロールがあります。
持続静注で使用するため、シリンジ型の製品の方がシリンジポンプでそのまま使用できますので便利です。
その際、注意点として、ニトログリセリン専用の点滴ルートを使用する必要があります。
ニトログリセリンは通常の点滴ルート(塩化ビニル)を使用すると吸着してしまうため、専用のルート(ポリエチレンなど)を使用する必要があります。
ニトログリセリンの副作用
ニトログリセリンは非常に強い血管拡張作用を有しています。
主に心臓の周りの血管を拡げて胸の痛みを改善させますが、全身の他の血管も拡げます。
そのため、脈を打つような拍動性の頭痛を生じることがあります。
私は、過去に期限切れのニトロの舌下錠を試しに使用してみましたが、頭がガンガンしました…
また、血管を拡げるため血圧も下がります。
緊急高血圧症でも使用することもあるため、血圧が下がるのは当たり前ですが。
典型的なSide effectですね。
ニトログリセリンと言えばダイナマイト
薬以外でニトログリセリンといえば、ダイナマイトを思い出す方もいると思います。
ノーベル賞のノーベルさんが発明したものです。
爆薬を扱っている工場で働いている人が、休日になると胸の痛みを訴えて、働いている間は症状が治まることから、ニトログリセリンが狭心症に効果があるのではないか、ということから発見されたようです。
薬のニトログリセリンは爆発しないの?と思う方もいるかもしれません。
密閉したり大量にあると爆発しますが、くすりで使用する量はわずか0.2mgとわずかのため、爆発することはありません。
まとめ
- 狭心症の発作治療に有効なニトログリセリンですが、初回通過効果が高いため、飲み込んでしまうと効果はありませんので、必ず舌下で使用しましょう。
- 2回使っても症状が改善しない場合は心筋梗塞が考えられるため、すぐに病院へ行きましょう。
- 点滴静注で使用する場合は、専用の点滴ルートを使用しましょう。
- 副作用としては頭痛、血圧低下があります。