高齢者では若い人と比べ、薬の副作用が出やすいのでしょうか?
どんな薬でも、必ず副作用はあります。
例えば、アレルギーの薬を飲むと副作用で眠くなることがありますが、その眠気を利用して市販薬で睡眠導入剤として使用されているものもあります。
年齢を重ねると、薬を分解したり体の外へ排泄する機能が低下してくるため、若い人と比べると薬が効きすぎたり副作用が強く現れることがあるため注意が必要です。
薬は、肝臓で分解されて作用が無くなるか、そのままの形で腎臓を経由して尿として体の外へ排泄されます。
薬は肝臓で分解される
肝臓で分解されて、作用が無くなる薬があります。
もし、肝臓の機能が低下している場合は、このような薬を使用すると、分解される量が減って、作用が強く現れたり副作用が強く出たりします。
肝臓の機能を表す血液検査の値は、AST(GOT)やALT(GPT)があります。
この、ASTやALTの値が高い場合は、肝臓が痛んでいることを表しています。
ただ、高齢者の場合、このASTやALTの値が高くなくても肝臓の機能が低下していることがあります。
また、肝硬変などの場合も、ASTやALTの値が正常だったとしても肝臓の機能が低下していることが考えられます。
本格的に肝臓の機能を評価する場合は、Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類といって、ビリルビンやアルブミンといった検査値を使って評価をします。
このChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類の評価で肝臓の機能が低下していると判断された場合に、薬の量を減らさなければならないこともあります。
薬は腎臓から体の外へ排泄される
肝臓の機能が低下している場合、薬の量を減らさなければなりませんが、それよりも腎臓から体の外へ排泄される薬の方が、より注意が必要な場合が多くあります。
高齢だからと言って肝臓の機能の評価をすることはあまりありません。
しかし、高齢者では確実に腎臓の機能は低下してきます。
血液検査では血清クレアチニンという値で評価をします。
この血清クレアチニンの値が1.0mg/dLを超えた場合は、腎臓の機能が低下していると考えられます。
このような場合に、腎臓から排泄される薬を減量せずに使用した場合、目に見えて副作用が強く現れることが多くあります。
もちろん、作用も強く現れてしまします。
高齢者は肝臓や腎臓の機能が低下している
当然ですが、加齢とともに肝臓や腎臓の機能は低下していきます。
機械などと同じで、長年使用していれば、必ず経年劣化は生じます。
心臓の機能が低下すれば、心不全になってむくみがでたり息苦しさといった症状が出ます。
これと同じように、個人差はあっても、必ず年齢とともに肝臓や腎臓の機能は低下しますので、高齢者では薬の量を調節する必要があります。
特に腎臓から体の外へ排泄される薬は副作用に注意が必要
肝臓の機能の評価はChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類で行いますが、高齢者だからと言って、Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類を使って肝臓の機能を評価することはありません。
それよりも、腎臓の機能は血清クレアチニンや体重、年齢を用いてクレアチニンクリアランスやeGFRといった具体的な数値を計算して評価されます。
腎臓の機能が低下している高齢者に、腎臓から体の外へ排泄される薬を減量せずに投与すると、体の中の薬の量が非常に多くなり、作用が強く現れたり副作用が強く現れたりします。
特に帯状疱疹や単純疱疹で使用する薬は、腎臓から体の外へ排泄される薬ですが、高齢者に通常の量で投与されて、精神症状などの副作用が出ることがあります。
高齢者で精神症状の副作用が出ても、認知症と判断されてしまい、薬の副作用を疑うことなく、認知症の薬が追加されてしまうといったこともあるかもしれません。
帯状疱疹の治療薬以外にも、抗菌薬や不整脈の治療薬など、腎臓から体の外へ排泄される薬は多くあります。
薬の副作用の症状を治療する目的で、さらに薬が追加される
高齢者では肝臓や腎臓の機能が低下しているため、副作用が出やすい状況にあります。
何らかの薬の副作用の症状が出た場合、その副作用の症状を治療する目的で、さらに薬が追加されてしまい、どんどん薬の種類や量が増えてしまうことがあります。
これを、ポリファーマシーといいます。
薬の種類や量が増えることで、さらに別の副作用の症状が出てしまうこともあります。
病院を受診しても、何も薬を出してくれなかった、と不満をいう患者さんもいるかもしれません。
しかし、薬を飲むことがいいことばかりとは限りません。
薬を減らすことで、今まで出ていた副作用の症状が消えて、さらに薬の量を減らすことができるかもしれません。
まとめ
高齢者では、若い人と比べ肝臓や腎臓の機能が低下しているため、薬の作用が強く現れたり、副作用が出やすくなったりします。
特に、腎臓から体の外へ排泄される薬は、副作用が現れやすくなるため、注意が必要です。
副作用のない薬はありません。服用する薬は必要最低限にするのが一番です。
こんなにたくさんの薬を飲んでいていいのかな?自分の飲んでいる薬は腎臓から体の外へ出る薬なのかな?といった疑問がある方は、ぜひ薬剤師に相談してみてください。
もちろん、このブログへ問合せしていただいても結構です。