凝固系のカスケードって何回見ても、よくわからないですよね…
第なんとか因子とか言われても…
そこで、今回は抗凝固薬の作用機序についてまとめてみました。
カスケードの図を見て、嫌にならずに、難しく考えずに、最後まで読んでください。
血管壁が障害されると、コラーゲンに血小板が粘着します。粘着した血小板はADPやトロンボキサンA2、セロトニン、血小板活性化因子などを放出し、さらに血小板を凝集させます。
この状態では血小板の凝集は弱いため、これにフィブリンが形成され、血小板の凝集が強くなります。
このフィブリンの形成には、下図の凝固系のカスケードが関連しています。
血液凝固カスケードの図はよく見かけますよね。
でも、細かすぎて何だかよくわからない…でも、少しずつ理解してみましょう。
まず、発端は内因性と外因性に分けられますが、途中、「第Xa因子」で一緒になります。
凝固因子は、IからXIII(1から13)までありますが、順番に名前がついているだけで、Iはフィブリンだったり、IIはプロトロンビンだったり、IVはカルシウムイオンだったりします。
しかも、VI因子は存在しないらしいです。
ですので、凝固系カスケードの図を見ても「第I因子」とか「第IV因子」は載っていないんですね。
とにかく、体の中で異常が生じ、止血が必要になると、このカスケードが発動します。
ワルファリンが作用する凝固因子は、第II因子(プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子の4つになります。
これらの凝固因子は、合成される際に、N末端のグルタミン酸(Glu)が、γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)になることで凝固機能を持った正常な物質となります。
しかし、グルタミン酸(Glu)が、γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)になるには、ビタミンKが必要なのです。
ワルファリンは、肝臓でのビタミンKの代謝サイクルを阻害し、再利用を防ぎます。
そのため、ワルファリンを投与すると、体内でのビタミンKが不足し、第II因子(プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子の4つの凝固因子が正常な物質となることができず、抗凝固作用が発揮されます。
凝固系カスケードのうち、内因系も外因系も含め、4か所に作用するため、強い抗凝固作用が現れるのだと考えます。
DOAC(Direct Oral AntiCoagulant)はワルファリンに変わって、最近使用量が増えてきていますね。
ワルファリンはビタミンKの再利用を抑制し、体内でのビタミンKの量を減らして、ビタミンKに依存する凝固因子4種類の効力を減らし、抗凝固作用を示します。
それに対し、DOACは「Xa阻害剤」と言われるように、凝固因子のうち第Xa因子のみを阻害し、抗凝固作用を示します。
DOACはビタミンKとは無関係に、内因系と外因系の合流点であるXaを直接的に阻害するため、強力な抗凝固作用を示します。
DOACとまとめて説明しましたが、DOACの中でもダビガトランは少し作用する場所が異なります。
ダビガトランは、もう1段階先の、フィブリノゲンからフィブリンに変換するトロンビンの触媒反応を阻害するため、凝固系の末端で作用します。
ダビガトランもビタミンKとは無関係ですね。
抗凝固薬の作用機序をまとめてみました。
なぜワルファリンはビタミンKを摂取してはいけないのか、DOACはビタミンKを摂取しても問題ないのか、が分かったと思います。
ワルファリンもDOACも、最終的にはフィブリンの生成を抑制します。血小板凝集を、より強固にするためにはフィブリンも必要ですので、抗凝固薬も間接的に抗血小板作用がある、ということが理解できます。