【医療者向け】授乳と薬を考える時に必要なパラメーター

くすり

授乳婦に対する薬の安全性を考慮する際には、さまざまなパラメーターについて考える必要があります。

この記事では、そのパラメーターについて紹介します。

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バイオアベイラビリティ

経口薬では、バイオアベイラビリティが低いほど、母体の血中濃度は低くなるため、母乳への移行は低くなります。

また、母乳中へ薬物が移行しても、バイオアベイラビリティが低ければ、乳児が摂取する薬の量は少なくなります。

しかし、年長児と比べ、乳児の方が腸における透過性が高い可能性があり、注意が必要です。

分子量

一般的に、分子量が高いと乳汁中への移行は低くなります。

分子量200ダルトン以下のものは母乳に移行しやすいです。

ほとんどの医薬品の分子量は200~500のため、母乳に移行する可能性があります。

1000以上の物は、母乳中には移行しないと考えられます。

タンパク結合率

タンパク結合率が高いほど、乳汁中への移行は少なくなります。

通常、タンパク結合率が80%以上のものは、乳汁中への移行は少なくなります。

分布容積(Vd)

分布容積が大きいほど、間質液や細胞内に拡散するため、母乳中への移行は少なくなります。

分布容積が小さい(3L以下)ものは、母乳中に移行する可能性が高くなります。

解離定数(pKa)

母乳のpH(pH=7~7.2)は血漿のpH(pH=7.4)よりも、少し酸性です。

そのため、塩基性物質(pKa > 7)は乳汁中に移行する傾向があります。

理論摂取量(Theoretical Dose)

母乳へ移行し、乳児が摂取する薬の量を、mg/kg/日で表したもの。

一般的に、乳児は体重1kgあたり、1日150mLの母乳を飲みます。

理論摂取量は、下の式で計算できます。

理論摂取量(mg/kg/日) = 母乳中濃度(mg/mL) × 150(mL/kg/日)

小児(乳児)の治療用量に対する割合

乳児・小児が治療で使用する際に一般的に用いる量に対する、母乳を介して摂取する量になります。

これが10%以下であれば、安全であるといわれています。

小児の治療用量に対する割合(mg/kg/日) = 理論摂取量(mg/kg/日) × (100/通常の小児用量(mg/kg/日))

M/P比(Milk-to-Plasma drug concentration ratio)

薬が、どの程度母乳へ移行するか、という値。

M/P比が1を超えると、その薬は「母体の血液中に比べて、母乳中の濃度の方が高い」といえます。

ほとんどの薬のM/P比は0~2前後ですが、6を超えるような高い薬もあります。

相対的乳児摂取量:RID(relative infant dose)

母体の体重当たりの薬物摂取量に対する乳児の体重当たりの薬物摂取量の割合のことで、

RID = 乳児薬物摂取量(mg/kg/日) / 母親薬物摂取量(mg/kg/日)× 100

で表されます。

RIDが10%以下であれば比較的安全に使用でき、1%以下であれば母乳への影響は無視できるといわれています。

まとめ

さまざまなパラメーターを総合的に評価しますが、

  • バイオアベイラビリティが低い
  • 分子量が大きい
  • タンパク結合率が高い(80%以上)
  • 分布容積が大きい
  • 弱酸性(pKa < 7)
  • M/P比が1以下
  • RIDが10%以下(1%以下であれば、なお安全)

このような条件に当てはまる薬は、母乳中へ移行しにくいと考えることができます。

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