【病院薬剤師のすすめ】現役薬剤師から薬学生のみなさんへのメッセージ 病院も悪くない!

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薬学部を卒業した薬剤師の、約50%が薬局やドラッグストアに就職しています。

病院へ就職するのは、20%程度です。

残りの30%が官公庁や製薬会社への就職です。

最近では、地方の病院では薬剤師の募集をしても、なかなか募集が来なくて困っているのが現状です。

そのため、就職時の競争率が低く、適性検査で落ちるなど、余ほどのことがない限り就職試験で落ちることはありません。

私が就職した20年前は、空きがなければ採用の募集もなく、募集があっても倍率が非常に高く、なかなか病院へ入ることが難しい時代でした。

病院への就職を希望していた大学の同級生が、病院の採用試験に落ちてしまい、やむなく保険薬局へ就職した、ということもありました。

私は幸い、採用試験に合格することができ、病院薬剤師になることができました。

なぜ病院薬剤師は人気がないのか?

最近はFIREなど、仕事に対する考え方が大きく変わっていることもあるのかもしれません。

病院で働くと当直もあるし、大変な思いをして働きたくない、といった考えがあったりするのでしょうか。

だったら薬剤師にはならない方がいいですね。

薬局と比べて病院は年収が低いと思うのは間違い

多くの病院では、薬剤師は検査技師や放射線技師と同じコメディカルとして扱われるため、彼らと同じ給料になります。

それと比べ、薬局やドラッグストアは、数万円の薬剤師手当がもらえます。私は薬剤師手当といったものはもらっていません。

年齢がある程度高くなってくると、病院も薬局も給料はあまり変わらないかもしれませんが、新卒の場合、この薬剤師手当のために薬局の方が給料が多くなります。

私は40代ですが、平均年収でみると上位10%には入っていますので、病院で働いてもそれなりの給料をもらうことができます。

病院薬剤師は給料が少ない、と思うのは間違いです。

薬学部も4年制から6年制になり学費が今まで以上にかかり、奨学金をもらっている学生が増えているため、給料を心配して病院を敬遠しているのでしょうか。

そこは自分の生活の仕方だと思います。年収が1000万円でも全て使ってしまえば何も残りませんが、500万円の年収でも、400万円で生活すれば100万円を奨学金の返済にあてることができます。

お金のことは気にせず、本当に自分が何をやりたいのかを考えて、就職先を考えてもらえたらと思います。

お金に対する不安があるのであれば、リベ大の「お金の大学」をぜひ読んでください!

当直や夜勤があって仕事が忙しい?!

どんな仕事でも、楽な仕事はありません。

夜間当直を薬剤師がやっているからこそ、医師や看護師から信頼されるということがあります。

薬剤師がいない夜間は、麻薬であろうと何であろうと看護師が医薬品を用意する、といった状態では薬剤師は何のために必要なの?と思ってしまいます。

当直をやっていると、他の病院でもらった薬のことについて患者から問い合わせの電話が来ることもあります。

日中であればDI担当の知識豊富な薬剤師に聞くこともできますが、夜間はそうはいきません。

一人で対応することで、多くの知識や経験を得ることができます。

病院薬剤師の仕事

調剤や院内製剤、抗がん剤や高カロリー輸液の無菌調製、DI業務などは、どこの病院でも同じように行っていますが、病棟業務は病院によって内容に大きな差があります。

病棟業務

病院薬剤師は入院患者と主に接することになります。「入院」は非日常です。病院薬剤師は非日常の患者さんと接することになります。

私の病院では、病棟担当の薬剤師は1日中病棟にいて、入院患者の薬の管理をしています。

単なる服薬指導だけでなく、この患者さんにとって適切な使用量で薬が投与されているか、副作用が出ていないか、ということを確認しています。

また、病棟に常駐していますので、医師や看護師から薬の相談をされます。

いろいろな職種から質問をされると、頼られていると思い、非常にやりがいを感じます。

内服薬・外用薬 調剤

注射薬調剤

院内製剤の調製

抗がん剤調製

高カロリー輸液などの無菌調製

医薬品情報管理(DI)

病院薬剤師と薬局薬剤師の違い

病院薬剤師

病院薬剤師として働くのであれば、院外処方箋の発行率が高い病院を選んだ方がいいと思います。

「アンサングシンデレラ」の病院も院外処方箋を発行していませんでしたが、外来調剤に追われ非常に忙しいと思います。

病棟の仕事をしているとしても、片手間になってしまうため、なかなか満足した仕事はできないかもしれません。

それに対し、院外処方箋を発行していない病院は、外来患者の調剤にかかる時間を、入院患者に対して時間を割いて仕事をしています。

私がまだ20代の若いころ、とある薬剤師の先生に、「なんで病院で働こうと思ったの?」と聞かれました。

私は「患者さんとたくさん接したいから」と答えたところ、「だったら薬局で働きなさい。病院で働くのであれば、医師や看護師とたくさん話をしなさい。」と言われました。

病院でも患者さんに服薬指導をしないわけではありません。もちろん、服薬指導もしていますが、それ以上に、適切な薬物治療が行われるよう医師や看護師とコミュニケーションをとることが重要となります。

どこの病院で働くか悩んだ際は、院外処方箋発行率だけでなく、薬剤管理指導料の算定件数や病棟薬剤業務実施加算をとっているかどうかも判断材料にするとよいでしょう。

病院外処方箋発行率が90%以上で、病棟薬剤業務実施加算をとっていて、薬剤管理指導料の算定件数が月1200件以上の病院だと、病棟のことを積極的に行っている病院として考えてよいと思います。

薬局薬剤師

私は薬局薬剤師として働いたことはありませんが、病院薬剤師が入院患者と主に接するのに対し、薬局薬剤師は外来患者と主に接することになります。

入院患者は非日常ですが、外来患者は日常です。

薬局薬剤師の最終的に辿り着くべきところは在宅医療だと私は思います。

AIが進歩すれば、処方箋通りに調剤することは機械がやってくれます。

服薬指導もペッパー君がしてくれます。

薬局薬剤師は日常の患者に介入していくことが必要となります。それが在宅医療だと思います。

病院薬剤師の魅力

保険薬局と比べ、疾患や治療に関する知識を多く身に着けることができます。

まさに「百聞は一見に如かず」だと思います。いくら書籍や講演会で勉強をしたとしても、実際の患者さんで行われている検査や処置、治療などを自分の目で見て学ぶことにはかないません。

特に注射薬に関する知識は保険薬局では身に着けることは非常に難しいです。

また、処置や医療機器に関する知識も身に着けることができます。

例えば、研修医を終えた医師が、すぐに開業していたら、どう感じますか?

その開業医を受診したいと思いますか?

知識や経験が少なくて大丈夫なのかな?と私は感じてしまいます。

それと同じで、薬剤師も最初は病院で働き、ある程度の知識や経験を身に着けたうえで、保険薬局で働くべきだと思います。

たった11週間の病院での実務実習では、大したことは身につきません。

転職を考えるのであれば、薬局から病院ではなく、病院から薬局がベストだと思います。

医師の研修医制度

医師はいわゆる「研修医」として臨床研修を行うことが義務付られています。

現在は「診療に従事しようとする医師は、2年以上の臨床研修を受けなければならない」とされています。

「初期研修医」として大学卒業後に2年間の臨床研修が必要となります。

その後、専門医などを取得するためには「後期研修医」として、初期研修2年の後、さらに3~5年程度のカリキュラムにのっとった研修を受ける必要があります。

レジデントを経験してから薬局薬剤師へ

薬剤師は大学卒業までに受ける臨床研修は病院11週間、薬局11週間とわずか22週だけです。

医師の臨床研修と比べて非常に短いですね。

こんな短期間の臨床経験のみで実際の患者さんと接していいのでしょうか。

大学病院や大規模病院ではレジデント制度を導入しているところがあります。

レジデント制度では大学卒業後に病院で薬剤師として働きながら2年間の研修を行います。

給与をもらうことができます。

1年目は一般的な領域について広く学び、2年目は専門的な領域を学ぶところが多いのではないでしょうか。

私は、今までレジデント制度は病院で働く薬剤師のためにあると考えていましたが、現在では薬局で働く薬剤師にも非常に有効だと思っています。

医師の研修制度と同じとはいきませんが、薬局薬剤師として働く前に、レジデントとして2年経験したうえで薬局薬剤師になるのがいいかもしれません。

まとめ

  • 病院薬剤師も薬局薬剤師も生涯年収は変わりません。

  • 病院薬剤師は入院という「非日常」に、薬局薬剤師は「日常」に関わります。

  • 注射薬に関する多くの知識を身に着けることができます。

  • 「百聞は一見に如かず」 治療はもちろん、検査や処置、医療機器に関する多くの知識を身に着けることができます。

  • 働く病院を選ぶ際には、院外処方箋発行率90%以上、薬剤管理指導料の算定件数が月1200件以上、病棟薬剤業務実施加算をとっている病院を選ぶとよいでしょう。

こちらもぜひ参考に!作者の荒井ママレさんのTwitterです。【荒井ママレさん Twitter】

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