総合感冒剤であるPL配合顆粒の添付文書をみると、禁忌の項目には様々な内容が記載されています。
消化性潰瘍のある患者、アスピリン喘息の患者、前立腺肥大症の患者。
そして、閉塞隅角緑内障の患者にも禁忌となっています。
PL配合顆粒は処方箋医薬品ですので、医師の処方がないと使用できません。
しかし、最近はPL配合顆粒と同成分のスイッチOTCであるパイロンPL顆粒を薬局で購入して使用することができます。
PL配合顆粒やパイロンPL顆粒、は全ての緑内障患者で使用できないのでしょうか?
緑内障の自覚症状としては、見えない場所(暗点)が出現する、あるいは見える範囲(視野)が狭くなる症状が最も一般的です。しかし、日常生活では、両眼で見ていますし、多くの場合、病気の進行は緩やかなので、初期は視野障害があってもまったく自覚しないことがほとんどです。急激に眼圧が著しく上昇した場合(急性緑内障発作)は、眼痛・充血・目のかすみのほか、頭痛や吐き気を自覚することもあります。
日本眼科学会HPより引用
視野に黒い部分が出現し、それが徐々に拡大していって、見える範囲が狭くなってきます。
原因としては、眼圧が高くなることが原因ですので、眼圧を下げて、緑内障の進行を遅くすることが目的です。
緑内障が進行すると、最終的には失明してしまいますので、眼圧を下げるために点眼薬を使用し、進行を遅らせることが重要です。
眼の中には眼房水といわれる水があります。
産生された眼房水はシュレム管という部分から排出されて、一定の眼圧が保たれるようになっています。
しかし、何らかの原因で眼房水が排出されずに眼圧が上昇してしまうのが緑内障です。
緑内障には「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」の2つがあります。
上の図の「隅角」が閉塞しているかどうかで分けられます。
開放隅角緑内障は、名前の通り、隅角は開放されており、眼房水は正常に流れていることが多く、眼圧が正常な場合もあります。
それに対し、閉塞隅角緑内障は、隅角が閉塞して眼房水が流出することができず眼圧が高くなってしまいます。
閉塞隅角緑内障の患者に抗コリン薬を使用すると、瞳孔括約筋が弛緩し隅角がさらに閉塞し、眼房水の流出が妨げられ、さらに眼圧が上昇してしまうため禁忌となっています。
開放隅角緑内障では、もともと隅角は閉塞していないため、抗コリン薬を使用しても隅角が閉塞するわけではないため禁忌ではありません。
開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の有病率は、どのくらいなのでしょうか。
岐阜県の多治見市で行われた、「日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査(通称:多治見スタディ)」という調査結果があります。
この結果を見ると、緑内障の全体での有病率は5%となっています。
開放隅角緑内障の有病率は3.9%、閉塞隅角緑内障は0.6%となっています。
すなわち、緑内障の患者のうち、78%が開放隅角緑内障ということになります。
閉塞隅角緑内障の患者は、全緑内障患者のうち、12%となります。
緑内障の患者の多くは、開放隅角緑内障ということになりますね。
緑内障の患者の78%、約8割が開放隅角緑内障ですので、ほとんどの場合は抗コリン薬を含む風邪薬を問題なく使用できることになります。
しかし、約1割は閉塞隅角緑内障の患者さんになりますので、そのような患者さんでは抗コリン薬を含む風邪薬は使用できません。
患者さん自身は、「緑内障」であることは分かっていても、「開放隅角緑内障」なのか、「閉塞隅角緑内障」なのか、までは把握していないのではないでしょうか。
確率論では、多くの場合で問題なく風邪薬を使用できると思われますが、割合は低いですが、閉塞隅角緑内障の患者さんもいますので注意が必要です。
緑内障は「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」に分けられます。
緑内障患者のうち、約8割が「開放隅角緑内障」で、約1割が「閉塞隅角緑内障」と、ほとんどが開放隅角緑内障です。
開放隅角緑内障では抗コリン薬を含む風邪薬は問題なく使用できます。
緑内障は徐々に進行するため、その進行を遅らせるために点眼薬を使用することが重要です。
しかし、急性期の症状としても頭痛や悪心、嘔吐などの症状が現れることがあります。
閉塞隅角緑内障の患者に抗コリン薬を含む風邪薬を使用した場合も、急性症状を起こすことも考えられますので、やはり使用は避けた方がよさそうですね。