新型コロナウイルス感染者数は毎日テレビなどで報告されています。
新型コロナウイルスの感染が流行してから、インフルエンザの発症は明らかに減少しています。
私も、ここ2年ほどはタミフルやリレンザといったインフルエンザの治療薬は手に取ったことがないくらい、明らかに減少しています。
例年、5月末までの患者数の推移が厚生労働省から発表されていますが、今年はインフルエンザの患者がいないことから、3月13日までの集計で終了となっています。
世間一般で「インフルエンザ」と言えばインフルエンザウイルスの事ですね。
医療現場では「インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)」が臨床で問題となることがありますが、こちらは細菌でウイルスとは違います。
「定点当たりの報告数」とは?
インフルエンザの報告数で、「定点当たり」という言葉をよく耳にします。
そもそも、「定点当たりの報告数」とは何なのでしょうか。
定点当たりの報告数とは、報告するよう指定されている医療機関の報告数を、その医療機関の施設数で割った数字です。
全ての発症例の数が把握されているわけではない、ということです。
感染症は種類によって、病気の重篤度、感染のしやすさ、感染経路などにより、一類から五類に分類されています。
一類から五類になるにつれ、軽い感染症と理解してよいでしょう。
一類には非常に危険な感染症、エボラ出血熱のような感染症が分類されます。
一類のような非常に危険な感染症は、全ての発症例について把握しておかなければならないため、全症例の報告が義務付けられています。
それに対し、5類の一部は比較的軽症な感染症であるため、大雑把な数だけ把握していれば大丈夫、ということです。
新型コロナウイルスが流行する前
【厚生労働省 2019年3月29日発表 インフルエンザの発生状況について】
厚生労働省が発表した2018年9月から2019年3月までの情報をまとめました。
2018/2019シーズンの状況
第10週(3月4日から3月10日)の定点当たりの報告数
2018/2019シーズン第10週の定点当たりの報告数は4.12となっています。
同時期の2017/2018シーズンの定点当たりの報告数は12.05となっていますので、さらにインフルエンザが流行していたことがわかります。
3月末までの全国の学級閉鎖数
3月末の保育園や幼稚園、小学校、中学校、高等学校の学級閉鎖や学年閉鎖、学校閉鎖をした施設の数は32,494施設となっています。
非常に多いですね。
インフルエンザによる入院患者の数
3月までにインフルエンザが原因で入院した人の数は全国で19,578人となっています。
ICUに入室したのが735人、人工呼吸器を必要としたのが523人と重篤な患者も多くいます。
新型コロナウイルスが流行した後
新型コロナウイルスが流行する前は、年末年始の当直時はタミフルやリレンザの処方が多くありました。
しかし、ここ2年ほど、これらのインフルエンザの薬を全く触っていないほど患者はいません。
【厚生労働省 2022年3月18日発表 インフルエンザの発生状況について】
厚労省のデータをまとめました。
2021/2022シーズンの状況
第10週(3月7日から3月13日)の定点当たりの報告数
定点当たりの報告数は、なんと0.0、ゼロです。
全報告数も18しかありません。
2018/2019シーズンや2017/2018シーズンと全く違います。
3月末までの全国の学級閉鎖数
学級閉鎖になった施設は、たったの1施設です。
これも2018/2019シーズンと全く違います。
インフルエンザによる入院患者の数
3月までにインフルエンザが原因で入院した人の数は全国で35人となっています。
ICUに入室したのが3人、人工呼吸器が必要となったのが2人です。
まとめ
新型コロナウイルスが流行する前と比べ、明らかにインフルエンザの感染は減少しています。
手指消毒やマスクの着用など、感染対策が徹底された、というだけで説明がつくのでしょうか。
今シーズンはワクチンの流通が少なく、接種できない人もいたかもしれません。
それを考えると、予防接種の影響も考えにくい。
インフルエンザの患者が少なくなっているのは事実です。
しかし、ICUに入室したり人工呼吸器が必要となるような重症な患者がいることも事実です。
インフルエンザは怖くないから、インフルエンザは流行しないからワクチンは接種しなくていい、という考えは大間違いです。
新型コロナウイルスも同じですが、ワクチンによる予防接種の効果は絶大です。
アレルギーなどの理由で接種できない場合を除いて、今後もインフルエンザのワクチンは毎年摂取した方がいいでしょう。
もちろん、新型コロナウイルスのワクチンも同じです。