血液検査で測定することができる「PIVKA-II」は肝細胞がんの腫瘍マーカーとして使用されます。
以前、肝細胞がんの既往がない患者さんで、PIVKA-IIが以上高値を示したことがあり、非常に驚いたことがありました。
肝細胞がんの既往もないし、現在も肝がんを疑うような状況ではなかったのに…
実は、この患者さんはワーファリンを服用していたため、PIVKA-IIが上昇していたのです。
PIVKA-II(PIVKA2)とは
肝細胞がんの指標
PIVKA-II(PIVKA2:Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist)は、肝細胞がんの指標として用いられます。
肝細胞がんの患者さんでは、PIVKA-IIが異常高値となります。
ただ、全ての肝細胞がんの患者さんで、このPIVKA-IIが上昇するとは限りません。
また、肝硬変の患者さんでもPIVKA-IIが上昇することもあります。
そのため、このPIVKA-IIの上昇だけで肝細胞がんかどうか診断することはできませんが、ひとつの指標にはなります。
また、ビタミンK欠乏症でも、PIVKA-IIが上昇することがあります。
凝固活性を有さない凝固因子のこと
PIVKA-IIは凝固活性を有さない凝固因子を示します。
【凝固カスケードは怖くない!】抗凝固薬の作用機序をまとめてみました でも解説しましたが、
血液凝固因子の第II因子(プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子の4つの凝固因子は、
「ビタミンK依存性凝固因子」と呼ばれていて、還元型ビタミンKが存在することで正常な凝固機能を
持った凝固因子となることができます。
これらの凝固因子は、合成される際に、N末端のグルタミン酸(Glu)が、γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)になることで凝固機能を持った正常な物質となります。
ビタミンKが存在しないと、グルタミン酸(Glu)が、γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)になることができず、凝固機能を持った正常な凝固因子になることができません。
この、N末端がグルタミン酸(Glu)のままの、正常な凝固機能を持たない凝固因子をPIVKA-II(PIVKA-2)といいます。
ワーファリン(ワルファリン)がPIVKA-IIを上昇させる
ワルファリンは、グルタミン酸(Glu)を、γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)へ変換する酵素(ビタミンK 依存性エポキシドレダクターゼとビタミン K キノンレダクターゼ)を阻害します。
そのため、ワーファリン服用中は正常な凝固機能を持たない凝固因子、すなわちPIVKA-IIが上昇するのです。
ビタミンK欠乏症や肝細胞がんでも、PIVKA-IIが上昇するのは、当然ですね。
PIVKA-IIを、「肝細胞がんの腫瘍マーカー」と思わない方がよさそうですね。
PIVKA-IIは、あくまで「正常な凝固機能を持たない凝固因子」のことですので、肝細胞がんはもちろんですが、ビタミンK欠乏症やワーファリン服用中でもPIVKA-IIが上昇するのは想定の範囲内ですね。
まとめ
PIVKA-IIは「正常な凝固機能を持たない凝固因子」のことです。
肝細胞がんの腫瘍マーカーとして検査されることもありますが、ビタミンK欠乏症やワーファリン服用中でも上昇しますので、頭に入れておいた方がよいですね。
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