効き目の長い薬ほど、飲み忘れてしまうと、安定した効果が出るまでに時間がかかってしまいます。
最近の薬剤師国家試験は実務に関連する問題が多く出題され、医療現場で働く、国家試験対策の勉強をしてない私のような薬剤師でも答えられる問題が非常に増えてきました。それだけ、医療現場に即した薬剤師が求められる時代になってきた、ということだと思います。
今回は、過去の薬剤師国家試験の問題を踏まえながらのお話です。
答えは、効き目が長い薬ほど安定した効果が得られるまでに時間がかかります。
花粉症の薬で考えると、アレグラは1日2回の薬で、安定した効果が得られるまで、約2日間かかります。
1日1回のクラリチンは安定した効果が得られるまで約4日かかります。
もちろん、薬を飲んですぐに効果が現れないのではなく、最大限で安定した効果が得られるまでにかかる時間になります。
痛み止めのロキソニンなどは効き目がそれほど長くないため、効果はすぐに現れます。
ここからは専門的な話になってしまいますが、106回 薬剤師国家試験 問344を振り返ってみたいと思います。
アムロジピンが新規に処方された患者からの「飲み始めて、どれくらいで効果が現れるか?」という質問に対する対応をこたえる問題ですね。
TmaxやCmax、AUC、T1/2など薬物動態に関連するパラメーターが記載されています。
難しい計算式を使って答えなければいけないのか…と思うかもしれませんが、計算式は必要ありません。
このパラメーターの中で使用するのはT1/2だけです。
「定常状態に達するまでに、半減期の約4~5倍の時間がかかる」
これを知っていれば、この問題は簡単に解くことができます。
摂取した薬剤は吸収され血中濃度が上昇します。そして代謝・排泄され血中濃度が下がってきます。また次に服用して血中濃度が上昇し、代謝・排泄され下がって、を繰り返し、血中濃度が安定する定常状態に達するまでには時間がかかります。
では、定常状態に達するまでに、どのくらいの時間がかかるかというと、半減期の4~5倍かかります。そのため、半減期が長い薬剤ほど定常状態に達するのが遅くなります。
半減期が長い薬剤では、すぐに定常状態まで血中濃度を上げたい場合に、ローディングドーズと言って初回の投与量だけ増量したり、投与間隔を短くしたりすることで血中濃度を上昇させる方法も使用されます。
実際、医療現場では抗MRSA薬のバンコマイシンやテイコプラニンは、ローディングドーズを用いて早期に治療域に血中濃度をあげる方法を用いています。
「定常状態に達するまでに、半減期の約4~5倍の時間がかかる」これを使って計算します。
アムロジピンの半減期は35.4時間と示されていますので、5倍で計算して定常状態に達するまでに177時間かかります。
1日は24時間ですので、177時間を24で割ると約7.4日となりますので、回答は2になります。
数字をみても慌てずに、難しく考えずに解けるといいですね。
薬に関するこちらの記事も参考に。