一般的に、漢方薬は作用がマイルドで副作用がなく安心して服用できると思っている方が多いのではないでしょうか。
一般の方だけでなく、医療者の中でも、そのように考えている人が多いのかもしれません。
漢方薬も「医薬品」のひとつであり、命に係わる重篤な副作用が出ることがありますので、注意が必要です。
小柴胡湯という慢性肝炎で使用される漢方薬は、「間質性肺炎」という肺の重篤な副作用が生じ、当時の厚生省から注意喚起がでました。
間質性肺疾患は、びまん性実質性肺疾患とも呼ばれ、間質腔が傷害されるいくつかの病気をまとめた総称です。間質腔とは、肺胞(肺にある空気の袋)の壁や、血管と細い気道の周りの空間を指します。間質性肺疾患は、肺組織に炎症細胞が異常に集積する結果、息切れやせきが生じる病気です。
間質性肺疾患には様々な病気があり、原因もそれぞれ異なっていますが、類似した特徴がいくつかみられます。いずれも、血液中に酸素を運搬する能力が低下し、肺の硬化や萎縮が生じるため、呼吸が困難になり、せきが出るようになります。しかし、血液中から二酸化炭素を除去する機能は、一般に影響を受けません。
MSDマニュアル家庭版より
平成6年1月から平成8年3月までの約2年間で、小柴胡湯を服用中の患者さんで間質性肺炎の副作用で10名もの方が亡くなっています。
漢方薬の副作用で亡くなっている方がいると聞くと、驚く人もいるのではないでしょうか。漢方薬だから安全というのは大きな間違いです。
薬と毒は表裏一体です。いい部分だけを利用したのが薬ですので、使い方を間違えば毒の部分が強く出て副作用が現れます。
コロナワクチンによるアナフィラキシーのように、多くの人では問題ないけれども、ごく一部の人では問題になることがあります。
このような、アレルギー反応的な副作用は予想が困難ですが、起こる頻度が高ければ薬としては使えません。結局は発生する頻度の問題で、薬にもなるし毒にもなるということです。
小柴胡湯だけでなく、柴苓湯(ツムラ114)や柴朴湯(ツムラ96)、辛夷清肺湯(ツムラ104)、黄連解毒湯(ツムラ15)、半夏瀉心湯(ツムラツムラ14)、六君子湯(ツムラ43)などの漢方薬でも間質性肺炎の副作用の報告があります。
発症時期も、飲み始めて数週間で現れる場合もあれば、数か月間服用していて現れる場合もあります。
オウゴンという成分が入っている漢方薬で間質性肺炎が起きやすい、という考えもあるようですが、原因ははっきりわかっていません。
間質性肺炎だけでなく、カンゾウが入っている漢方薬(柴苓湯:ツムラ114、柴朴湯:ツムラ96、芍薬甘草湯:ツムラ68、苓桂朮甘湯:ツムラ39、半夏瀉心湯:ツムラ14、六君子湯:ツムラ43)はむくみが起きやすく、マオウが入っている漢方薬(麻黄湯:ツムラ27、葛根湯:ツムラ1)は嘔気や嘔吐、動悸などの副作用が現れることがあります。