この波形は、torsade de pointsで、「トルサデポアン」や「トルサード・ド・ポワンツ」と言われています。
以下、トーアエイヨーのHPからの引用です。
心室頻拍の一種で、「不規則で、通常反復性の心室頻拍の特殊型で、特有の原因をもち、発作時QRS軸が連続して変化するため、心電図誘導によっては心室波形が基線を中心に捻れた形(torsardes)にみえるもの」とされている。非発作時には、QT延長がよくみられる。
原因としては、先天性QT延長症候群、完全ないし高度房室ブロック、薬剤〔Ⅰa群を主とする抗不整脈薬、三環系抗うつ薬などの向精神薬など〕、電解質異常(低K血症、低Mg血症)、クモ膜下出血などが挙げられる。
難しいかもしれませんが、心室頻拍の一種で、致死性の不整脈で危険な不整脈である、と覚えておけばよいでしょう。
意識消失(失神)の原因となる疾患がいくつか挙げられるとよいですね。
失神の原因としては「脳血流の減少」が考えられます。
「脳血流量の減少」は主に心拍出量の低下、すなわち心臓から送り出される血液量が減少して、脳に送られる血液が減少する、と考えれば分かりやすいと思います。
日常でよくみられるのは、「起立性低血圧」による循環血液量の低下があります。
学校などで、校長先生の話を立って聞いている時に、時間が長くなると、フラフラっとしてしまうことがありますね。
世間一般では、これを「貧血」といいますが、正しくは「起立性低血圧」ですね。正確には「貧血」は赤血球が減少している状態を指します。
大動脈弁狭窄症や僧帽弁狭窄症は心拍出量の低下の原因となります。
心拍出量が低下することで脳に送られる血液量が低下し意識消失を生じる原因となります。
一時的に脳の血流が滞るため意識消失を生じる原因となります。
名前の通り「一過性」であるため、繰り返すことがなければ脳梗塞のように継続した治療をする必要はない場合がほとんどです。
徐脈の場合に脳への血流量が低下することは容易に想像できますね。
完全房室ブロックや洞不全症候群では循環血液量が低下し、意識消失の原因となることがあります。
頻脈でも心拍出量が低下します。特に心室性の頻脈では心拍出量が低下します。
心臓から脳や全身に血液が送り出されるためには、心室が正しく収縮しなければなりません。
心室頻拍や心室細動は、心室が痙攣しているイメージを持ってもらえばいいと思います。
心室性の不整脈は致死性の不整脈ですので、速やかに治療する必要があります。
今回の問題の心電図は心室頻拍で、心室が痙攣しているため、全身や脳に血液が送られていない状態です。
問288の正解は、3の「不整脈により心拍出量が低下した」になります。
1の「不整脈により、生じた血栓が脳血流を障害した」は、今回の症例とは関係ありませんが、この不整脈は心房細動のことですね。
2の「不整脈により、生じた血栓が冠血流を障害した」は、実際にはありえないと思います。血栓が冠血流を障害する疾患は心筋梗塞や狭心症がありますが、これらの原因はアテロームなどであり不整脈で生じる血栓が原因になるとは考えにくいです。
4の「心筋収縮力の低下により、心拍出量が低下した」は、臨床的にはありえる内容で、肥大型心筋症のような疾患が考えられますが、今回の設問からは肥大型心筋症は考えられません。
5の「消化管出血により、血圧が低下した」は出血で循環血液量が低下した結果として血圧が低下しているため、今回の症例とは関係ありません。
心室頻拍の原因となる薬剤としてはⅠa群を主とする抗不整脈薬、三環系抗うつ薬などの向精神薬などがあります。
今回の選択肢の中で該当するのは、Ⅰa群の抗不整脈薬であるシベンゾリンコハク酸塩錠になります。
基本的に抗不整脈薬は、催不整脈作用があると覚えておくとよいでしょう。
また、不整脈の治療は「レートコントロール」と「リズムコントロール」に分けられることを理解しておきましょう。
「レートコントロール」は心拍数を調節すること、「リズムコントロール」は心電図の波形を調節すること、と覚えるとよいと思います。
I群、III群の抗不整脈薬はリズムコントロールに用いる薬剤で、催不整脈作用があります。
しかし、II群のβblockerとIV群のCa拮抗薬はレートコントロールに用いられる薬剤で、心拍数を抑えるためレートコントロールに用いられます。
そのため、最近では頻脈性心房細動では「レートコントロール」の目的でβblockerが主に用いられます。
心電図から、心室性の不整脈であることが分かるといいですね。
心室性不整脈は心室から全身や脳に送られる血液量が低下するため、意識消失の原因となります。