薬剤師国家試験に現役合格したい学生さんは必見!
第105回薬剤師国家試験の問340を、詳しく解説していきます。
また、設問として問題があるのでは?と少し疑問に思う点もありますので、その点についても解説していきます。
インスリンの単位や空打ちを行う理由についても解説します。
現場で働いている薬剤師にとっては、日常的に行っている業務ですので、それほど難しい内容ではありませんので、落ち着いて計算してみてください。
インスリンの定期皮下注を継続している患者で、次回受診までのインスリンの必要本数と、注射針の必要本数を考える問題ですね。
外来患者の次回受診時や、入院患者が退院する際に次回受診までの必要本数を計算することは、実際の医療現場で日常的に行われています。
「インスリン」と聞いて、急に難しく考えてしまうのかもしれませんが、普通に計算すれば何の問題もありません。
インスリンは1mLあたり100単位が基本です。
インスリンのキット製剤は1本あたりに3mL含まれているため、1キットあたり300単位入っていることになります。
インスリンのキット製剤は、必要単位数を注射する前に、必ず2単位、空打ちをする必要があります。
空気を抜く目的もありますが、一番の目的としては「針の不具合がないか」を確認することです。
私が病院で働き始めた頃の話ですので、十数年前の話ですが、穴があいていない針が流通していたことがありました。
当然ですが、発覚してからは、当該ロット番号の製品は全て回収されました。
穴があいていない針を使用すると、インスリンを投与したつもりでも、実際にインスリンは投与されません。
1型糖尿病の患者さんでは、すぐに高血糖となってしまいます。
2型糖尿病の患者さんでも、これが続くとケトアシドーシスなど重篤な状態になってしまいます。
そのため、「きちんと使用できる針かどうか」を確かめるために必ず空打ちを行います。
インスリンは1mL 100単位、空打ちは2単位する、というのが一般的ですが、ひとつだけ例外があります。
それが、ランタスXRです。
ランタスXRはランタスの濃度を3倍にして、さらに持続性を持たせた薬剤です。
そのため、1mLあたり300単位で、ランタスXR 1キットあたり、1.5mLで450単位が含まれています。
また、ランタスXRは空打ちは3単位必要となります。
例外はランタスXRのみで、他のインスリンは全て、1mL 100単位、空打ち2単位が基本ですので、きちんと理解しておきましょう。
アスパルトは、1回3単位で1日3回となっています。
1回につき空打ち2単位が必要ですので、実際に投与する単位数と空打ちの単位数を合わせて、1回5単位必要となります。
設問では親切に「空打ちで2単位使用する」と記載されていますが、記載されていなくても空打ちの単位数は計算してくださいね。
これを1日3回投与するので、アスパルトは1日15単位必要となります。
1キットあたり300単位ですので、1キットで20日間使用できます。
計算しやすいような分かりやすい数字になっていますね。
グラルギンは、1回8単位で1日1回となっています。
1回につき空打ち2単位が必要ですので、実際に投与する単位数と空打ちの単位数を合わせて、1回10単位、すなわち1日10単位必要となります。
1キットあたり300単位ですので、1キットで30日間使用できます。
こちらも、きりのよい数字になっていますね。
アスパルトは3本処方されています。
1本で20日間、60回分使用できますので、アスパルトキット3本では180回分の針が必要となります。
次に、グラルギンは2本処方されています。
1本で30日間、30回分使用できますので、グラルギンキット2本では60回分の針が必要となります。
これらを合計すると、240本の針が必要となります。
しかし、自宅に13本の残があるとのことなので、針の必要本数は227本となります。
処方では4袋、28本の針が処方されていますので、不足している針は199本となります。
1袋に7本の針が入っているため、199本÷7=28.4 となり、切り上げて29袋必要となります。
設問には
インスリンアスパルト(遺伝子組換え)300単位/mL 3キット
インスリングラルギン(遺伝子組換え)300単位/mL 2キット
ときさいされています。
しかし、先ほども説明したように、インスリンの基本は「1mLあたり100単位」です。
グラルギンの持続性剤であるランタスXRは1mLあたり300単位ですが、設問では通常のグラルギンとなっています。
本来は、
インスリンアスパルト(遺伝子組換え)300単位/キット 3キット
インスリングラルギン(遺伝子組換え)300単位/キット 2キット
とするのが正しいですね。
インスリンの単位間違いによる医療事故は非常に危険で、PMDAや医療機能評価機構の医療安全情報でも何回も発出されています。
インスリンの単位数の表現を間違えるのは危険ですね。